住まわされていた、閉じ込められていた、といった方が適切だろうか。



日本有数の旧家の座敷家の家はは、その名に恥じない日本家屋であった。

洋式の様に豪奢でなく、しかし重々しい建て構えの母屋。四季それぞれに違った顔を見せる日本庭園。


だが、その風情のある建物は、世間体ではこう呼ばれていた。



通称、「箱」




決して中を見せる事をせず、監獄に等しいその姿は、まさしく
「箱」であった。




           ・・
現在、この街に「箱」は無い。



座敷家も、幸福以外はいない。



三年前の火災により、


座敷家の人々、家屋は消え去った。




幸福が起こした火災によって…