「ユイさん、あちらで……」


「えっ……?今、何て……?」


黒服に声を掛けられて、もう一度訊き返した。


酔っているから、聞き間違えたんだって思ったんだ。


だって……


まさか……


「あちらで織田様が……ドンペリピンクを三本と……」


黒服の言葉で、その場にいた全員が固まったのがわかった。


ドンペリピンクを三本……?


それっていくらよ!?


あたしは、もうほとんど機能しない頭で必死に考えていた。


ドンペリのピンクは、この店で一番高級なお酒。


それを三本なんて…。


ありえないと言うよりも、本気で馬鹿げている。


咄嗟に廉を見ると、彼は不敵な笑みを浮かべながら涼しげな表情であたしを見ていた。


そして…


あたしは、必然的に廉のテーブルに戻る事になった。