廉は意味深に笑うと、グラスに手を伸ばした。


「どう、して……あたしの名前……」


彼があたしの本名を知っている事に、どうしたって驚きを隠せない。


「お前が昨日入れたんだろ?」


昨日……?


「あっ……!」


昨日の事を思い出して、思わず声を上げた。


「思い出した?」


そう訊きながら意地悪な笑みを向けた廉に、少しだけ戸惑いながらも頷いた。


昨日、彼に言われてプライベート用の番号を教えた時、赤外線を使ったんだ。


あの時のあたしは、まだ平常心だったけど…


赤外線で番号を入れてしまったのは、完全に無意識だった。


赤外線と言う事は、番号やアドレスだけじゃなく、名前もフルネームで送られているハズ。


あたしは自分の浅はかさだけじゃなく、無意識の行動にも昨日と同じように恨みを抱いた。