「……何だ、もう恥ずかしくないんだ?」


しばらくしてから口を開いた廉は、あたしを見つめながら意地悪な笑みを浮かべた。


「昨日はいきなりだったから、ビックリしただけだよ。あたしだって、いつまでも振り回されてばっかりじゃないから」


そう言って、余裕の笑みを見せる。


「ふーん……。つまんねぇ……」


タバコを咥えた廉の前にライターを差し出し、火を点ける。


「これでも、あたしはこの店のナンバークラスだからね」


「なるほど……」


廉はしばらく考え込むと、あたしの瞳を真っ直ぐ見つめて来た。


今日は、絶対に動じたりしない。


あたしは笑顔を返して、ゆっくりとお酒を飲んだ。


その瞬間…


「澪……」


不意に本名で呼ばれて、心臓が跳ね上がった。


「……って言うんだな、お前の本名」