不意に、唇に冷たい物が触れた。


廉はあたしの顎を少しだけ上げながら、それを口の中に押し込んで来た。


ゆっくりと目を開けると、彼が意地悪な笑みを浮かべながら口を開いた。


「マジでキスされるかと思ったんだ?」


あたしの口の中に押し込まれた物は、パフェの苺だった。


その事に気付いた瞬間、顔が真っ赤になっていくのがわかって、あまりの恥ずかしさに俯こうとした。


だけど…


廉があたしの顎を持ち上げたまま見つめ続けているから、些細な抵抗すら出来ない。


「その顔、エロい……」


低く呟いた彼は、あたしの口元に艶を帯びた視線を送って…


「それ、俺にちょうだい」


あたしの口に咥えさせたままの苺に、そっと唇を近付けた。


あたしの唇と廉の唇は、触れるか触れないかのギリギリの距離を保っていた。