「ありえねぇだろ」


「実家の近くに海なんてないもん。どっちにしても、親とは不仲だったしね……」


あたしはため息混じりに答えて、また窓の外を見た。


「オトコは連れて来てくれねぇの?」


「今はいない」


窓の外を見たまま答えたあたしに、次々と質問が飛んで来る。


「昔のオトコも?」


「うん」


「一体、どういうデートしてたんだよ?」


廉は、怪訝そうな顔であたしをチラリと見た。


「同業者ばっかりだったから……。相手の店に行ったり、たまに休みが一緒になったら家で過ごしたり……」


「ふーん」


呟くように言った廉は、前を見たまま笑顔で口を開いた。


「じゃあ、お前の初体験は俺が貰ったんだな」


「その言い方、何かエロいし……」


そう言いながも、思わず笑顔になっていた。