ふと廉を見ると、カメラを出していた。


「もしかして、仕事の為にここに来たの?」


あたしは、彼に近付いてカメラに手を伸ばした。


「あぁ」


「本当にカメラマンだったんだね」


笑顔でそう言って、カメラを持ち上げた。


「どういう意味?」


「だって……本屋さんで調べても、“織田(オダ)廉”なんて名前なかったから……。嘘かと思ってた!」


「何で嘘なんだよ?太一からも聞いただろ?」


廉は怪訝そうな表情で、あたしを見下ろした。


「だって、廉はあんまり自分の事を話さないじゃない?それに……いつもあたしの事をからかうから………」


あたしは、小さく笑いながら彼の顔を見た。


「バーカ!つまらねぇ事ばっかり考えてるんじゃねぇよ」


廉はあたしから視線を逸らして、撮影の準備を続けた。