「澪っ!!」


廉に呼ばれても、振り返る事無く走った。


どうして、今更現れるの……?


あたしは、廉を信じている。


それでも…


あまりにも馴れ馴れしい彼女を、どうしても見ていたくなかった。


掴み掛けた幸せが崩れ落ちてしまいそうなのが恐くて、その事から逃げるかのように必死に走った。


だけど…


「澪っ!!」


あたしを追い掛けて来た廉に、腕を掴まれてしまった。


「ちょっと来い!」


そして彼に引っ張られて、今走って来た道を戻るハメになった。


「放してっ……!」


何度そう言っても、廉は聞く耳を持たない。


あたしは涙を堪えながら、彼の後ろを歩く事しか出来なかった。