「幸せ過ぎて、恐い……」


ゆっくりと深呼吸をした後、ポツリと呟いた。


「澪……」


電話の向こうにいる綾は、きっと困っている。


本当は、自分でもよくわからない。


あたしは、どうしてこんなにも不安なのか…。


両親と上手くいかなくて家出同然で実家を飛び出してからは、それなりに苦労して来た。


慣れないキャバの仕事に困惑して、毎日のように泣いて…。


付き合う男達にはすぐに捨てられて、その度に傷付いて…。


仕事の時以外は、どこにいても自分の居場所が無いような気がしていた。


そんな日々でも、自分の事を不幸だと思った事は無いけど…


逆に、心の底から幸せだと感じた事も一度も無かった。