「でも、イイなぁ……」


「ん?」


綾の言葉が何に対しての物なのかがわからなくて、自然と小首を傾げてしまった。


「旦那様が廉さんなんて……。澪は幸せ者だよ♪世界中のShikiファンを敵に回すんじゃない?」


「うん……」


おどけたように言った綾に小さく返事をすると、彼女は慌ててこう続けた。


「ちょっと、澪!今のは冗談だからね!そんなに深刻に受け取らないでよ!?」


「ううん、そうじゃなくて……」


「何かあったの……?」


あたしが否定すると、綾は真剣な声で静かに訊いた。


「ううん……」


「……じゃあ、どうしたの?」


あたしは小さなため息を漏らした後、アイスティーの入ったグラスを回しながら口を開いた。