「澪!」


あたしを探しに来たのか、男の人の後ろに廉の姿が見えた。


「廉っ……!」


あたしは顎を掴まれている手を払い退け、彼の元に走った。


「お前、何してた?」


「車が渋滞してたんだよ……。もう、最悪……」


二人の会話を聞いて、この男の人が今日のモデルだと確信した。


「そんな話してるんじゃねぇよ!こいつに何してたのか訊いてるんだ!」


怒りを含んだ廉の声が、静かな廊下に響き渡った。


「なぁ〜んだ……。澪って、お前のオンナなんだ?」


「はぁっ!?」


「廉、待って!」


凄むようにモデルの男の人に近付いた廉の手を、咄嗟に掴んだ。


「あたし、何もされてないからっ……!」