女の子や黒服達が帰った後、店に残っていたのはあたしと綾、それから店長だけだった。


「澪、帰ろ♪」


「うん……」


着替えを済ませた綾が、あたしに微笑みを向けた。


あたしのロッカーは前以て荷物を引き上げていたから、既に空っぽになっている。


後ろ髪を引かれる思いで、ゆっくりとロッカーを閉めた。


過ごし慣れた更衣室を後にして、ホールを横切る。


上手く歩けないような気がするのは、きっといつもよりも高めのヒールだけのせいじゃない。


あたしは店内の景色をしっかりと胸に刻みながら、ゆっくりと入口に向かった。


「お世話になりました……」


「……あぁ、元気でな」


最後にホールにいた店長に頭を下げ、綾と一緒に店を後にした。