「……失礼します」


気持ちを落ち着ける為に深呼吸をした後にノックをして、声を掛けてから事務室に入った。


「……ユイ、どうした?」


事務室にいたのは、予想通り店長だけだった。


「お話があるんですけど……」


「座れよ」


店長に促され、重厚感のある黒いレザーソファーに腰を下ろす。


「イイ話?それとも悪い話?」


店長は、あたしの瞳を真っ直ぐ見つめた。


「……悪い話、かな?」


今の店長はかなりのやり手で、この辺りの同業者からも“敏腕店長”として一目置かれている上に、社長からも気に入られている。


頭もキレるし、仕事も早い。


そんな店長だからこそ、あたしの言いたい事は見透かされていると思う。


あたしは、店長に笑顔を向けて話を切り出した。