沈黙のせいか、行き交う人達の声がやけに煩く感じる。


「綾、あのね……」


あたしが話し掛けると、綾がそれを遮った。


「澪、良かったね!絶対に幸せになりなさいよ!」


電話なのに大声を出して言ってくれた彼女の言葉が、あたしの胸に深く染み渡った。


横断歩道の先にある信号が、少しずつ滲んでいく。


グッと涙を堪えて、口を開いたけど…


「ありがとう、綾……」


そう言った後、あたしの瞳から涙が零れ落ちてしまった。


「うんっ……!うんっ……!」


二回も返事をした綾も、電話の向こうで泣いていたんだと思う。


最後にもう一度お礼を言ってから電話を切って、すれ違う人達の視線を浴びながら携帯を閉じた。