「今夜は、覚悟しとけよ?」


廉の甘い声が、吐息が、あたしの耳元でそっと響く。


胸が甘く締め付けられて、顔が熱くなっていった。


「澪、どうした?顔が真っ赤だけど?」


訊かなくてもわかっているくせに、廉はやっぱり意地悪だ。


「もう……。バカ……」


あたしはそう言って、恥ずかしさを堪えながら彼を見上げた。


「その顔、反則……。やっぱり今すぐ抱きたい……」


廉は一瞬だけ悩ましげな表情を見せたかと思うと、強引にあたしの唇を塞いだ。


「……んっ……ぅん、っ……!もうっ!!早く行かないと遅刻しちゃうよ!ほら、早くっ!!」


「はいはい」


悪戯に笑ってから歩き出した廉の背中を見つめ、自然と笑みが零れる。


さっきまでの不安が溶けたあたしの心は、優しい温もりに包まれていた。