「澪」


お風呂から上がって寝室に行くと、廉があたしを呼んだ。


彼はあたしをベッドに座らせると、ドライヤーで髪を乾かしてくれた。


これは、廉の機嫌がいい証。


自然と笑みが零れたあたしは、後ろにいる彼に寄り掛かった。


「澪、乾かし難いだろ……」


廉はそう言いながらも、声はちっとも怒っていない。


そんな事に胸の奥がキュンと鳴いて、益々嬉しくなった。


付き合ってから随分経つ今でも、廉はあまり笑顔を見せない。


たまに見せるのは、意地悪な笑みか、一瞬の笑顔くらい。


あたしが廉の満面の笑み見たのは、まだほんの数回だけ。


彼は元々クールだけど、それを少しだけ寂しく感じているから、こんな時は喜びを隠せない。


また、写真展の時みたいな優しい笑顔を見せて欲しいな……


その反面、心の中ではそう願っていた。