仕事中も、あたしの頭の中はさっきの綾の言葉でいっぱいだった。


“恋愛”と“仕事”。


つまりは、“廉”と“キャバ”。


どっちが大切かって……


そんな事、比べる対象になんてならないよ……


考えるまでも無く、“廉”に決まっている。


あたしはお客と話しながら、左手の薬指をチラリと見た。


廉から貰ったリングは、仕事中は外している。


どこか寂しげな左手の薬指を隠すように右手を重ね、目の前のお客に愛想笑いを浮かべた。


好きな仕事なのに、今日は気分が乗らない。


中々進まない時間を、何度も気にしてしまう。


廉はもう寝たかな……?


そんな事ばかり考えながら、0時過ぎに最後のお客を見送った。


帰り支度を済ませてから綾と一緒に店を出て、大通りで彼女と別れてタクシーで家に帰った。