「それは澪が悪いよ!」


綾は、ドレスに着替えながらキッパリと言った。


まだ出勤時間前の更衣室には、他に誰もいない。


仕事仲間で唯一あたしと廉の事を知っている綾に、さっきの事を話していた。


「わかってる……」


「廉さんに不満はないんでしょ?彼氏なら、この仕事は中々理解出来ないよ!」


綾の言葉を噛み締めるように、深く頷いた。


「恋愛と仕事、どっちが大切なの?」


「え……?」


あたしが振り返ると、綾は真剣な表情でもう一度言った。


「廉さんとキャバ、どっちが大切なの?」


わかってる……


「それは……」


あたしが言い掛けると、綾が優しく微笑んだ。


「わかってるなら、ちゃんとしてあげなよ!」


困ったように微笑んだ彼女の言葉が、あたしの胸の奥に深く突き刺さった。