「じゃあ、行って来るね……」


控えめに言って、ソファーで横になっている廉を見た。


あたしの出勤前は、彼はいつも不機嫌。


「あぁ……」


廉はそれを主張するかのように、あたしの顔を見る事も無く頷いただけだった。


そんな彼に少しだけ寂しさを感じながら、静かに家を出た。


彼氏にキャバの仕事を理解して貰うのが難しい事だと言う事くらいは、ちゃんとわかっている。


廉みたいな恋人がいて、あたしはすごく幸せ。


だからこそ、贅沢なワガママなのかもしれないと言う気持ちもある。


だけど…


廉と気持ちが通じ合った今もこんな状態なのは、寂しいからだけじゃない。


何度もキャバを辞めようと思ったのに、その度にお客や店長に引き止められて決心が鈍ってしまう。


誰かに必要とされるのはやっぱり嬉しくて、結局はそこから抜け出せずにいるんだ…。