廉がやっと、“澪”って呼んでくれた。


瞳に溢れていた涙が、堪え切れずに零れ落ちていく。


「ほら、澪」


廉は優しい笑顔のまま、舞台の上からまたあたしを呼んだ。


「澪、行きなよ♪」


隣にいる綾が、あたしの背中をポンと叩いた。


あたしが、ずっとずっと求めていた居場所。


すぐ目の前の舞台に立っている廉の所まで、必死に走った。


「……っ!!」


彼の名前を呼びたいのに、涙が邪魔をして呼べない。


あたしは泣きながら、廉の腕の中に飛び込んだ。


「どう、してぇ……?」


廉の腕の中で声を漏らしたあたしを、彼は優しく抱き締めた。


「言っただろ?『お前は絶対に俺からは逃れられない』って……。愛してる、澪……」


耳元で甘く低く囁いた廉は、あたしの唇に優しいキスを落とした。