「廉、ありがとう!」


その言葉だけじゃ足りないくらい嬉しくて、運転中の廉の顔を覗き込みながらお礼を言った。


「あぁ、それなら目立たないだろ?」


「え?」


「キスマーク」


確かに廉に付けられたキスマークは、ストールのお陰でほとんど見えなくなっていた。


「うん……。後は、ファンデで隠すよ♪」


廉が怒っていない事も、ドレスを用意してくれていた事も、本当に嬉しかった。


後は、あたしの事を“ユイ”じゃなくて“澪”って呼んでくれたら、もう何も言う事は無いのに…。


この際、もう写真は撮ってくれなくてもいいから、名前だけはちゃんと呼んで欲しい。


だけど…


廉の機嫌がいい今は、その事には触れない方がいい。


あたしは喜びを抱きながらも、頭の片隅ではそんな事ばかり考えてしまっていた。