廉に笑顔は無かったけど、怒っている表情でも無かった。


「怒ってないの……?」


「怒ってる」


恐る恐る訊いたあたしに、低い声が返って来た。


「えっ……?どっち……?」


廉の言いたい事がわからなくて、混乱してしまう。


「お前、ちゃんと話聞かなかっただろ。……だから、怒ってる」


「ごめんなさい……」


廉に真っ直ぐ見つめられて、あたしはまた俯いてしまったけど…


「でも……」


何かを言い掛けた彼を見る為に、すぐに顔を上げた。


「心配した……」


どこか苦しげに呟いた廉は、あたしの額にコツンと額を引っ付けた。


「ごめんなさい……」


小さく謝った直後、涙がポロポロと零れた。


「もうイイから……。ユイ、飯作れよ」


“ユイ”……


その言葉に、胸の奥がズキッと痛んだ。