「ん……」


「廉……?」


程なくして目を覚ました廉が、あたしに気付いた。


「どこ行ってたんだよ?」


その直後、彼は低い声で訊いた。


やっぱり怒ってる……


「綾の家……。ごめんなさい……」


涙混じりの声で謝ったあたしに返って来たのは、意味の読み取れない深いため息。


「お陰で、こっちは寝不足だ。忙しいのに……」


起き上がってタバコに火を点けた廉を前に、俯いたまま何も言えなかった。


たった今帰って来たばかりなのに、もう後悔している自分(アタシ)がいる。


あたしは意思が弱いんだ……


「ごめん……なさい……」


小さな声でもう一度謝ると、廉がまたため息をついた。


「イイよ、怒ってねぇから」


「え……?」


怒られると思っていたあたしは、驚いて顔を上げた。