綾が出勤する時に、一緒に彼女の家を出る事にした。


「本当に大丈夫……?」


「うん、大丈夫!」


心配そうに訊いてくれた綾に、笑顔で答えた。


今度は、ちゃんと笑えたと思う。


少しだけ不安はあったけど、不思議と心は落ち着いていた。


それどころか、もうすぐ廉に会えると思うと、少しずつ嬉しさが込み上げて来ていた。


喧嘩さえしてなかったら、もっと素直に喜べたのに……


自分から家を出て来たくせにこんな事を考えている時点で、あたしはやっぱり廉に依存しているのかもしれない。


だけど…


今となっては、それでもいいとすら思う。


廉が望むのなら、仕事も辞めてもいいと思っていた。


身勝手で独占欲の強い、危険な男…。


それでも、あたしは廉の事が好き。


彼はそれをわかっているから、連絡をして来ないのかもしれない。