「……何で泣いてるんだよ?」


あたしの涙に気付いた廉が、カメラを触る手を止めて訊いた。


だけど…


あたしはきっと、口を開いたらもう止まらない。


どうしよ……


「おい!」


廉は、あたしの気持ちを受け止めてくれる……?


ベッドに座っている廉に近寄って、ゆっくりと口を開いた。


「澪って……呼んで……」


「またその話かよ……」


廉はため息をつくと、ベッドに寝転んだ。


「イイから!あたしの事、澪って呼んでよ!」


今呼んでくれたら、今日の事は聞かなかった事にするから……


お願い……


あたしの名前を呼んで……


「そのうちな……」


廉がそう言って背中を向けた瞬間、自分の感情を抑える事が出来なくなって考えるよりも先に口が動いていた。


「ユイ……って名前だったんだね、元カノ……」


その言葉でこっちを向いた彼の顔色が、明らかに変わったのがわかった。