「廉っ!!」


玄関で靴を脱ぎ捨てて部屋のドアを開けた瞬間、ベッドに座る廉が視界に入って来た。


「今日は早かったな」


そう言った彼は、あたしの方を見ずにカメラを触っている。


廉は、どうしてあたしの事を見てくれないの……?


あたし、全部知ってるのよ……


あたしを撮らないのは、元カノの事があるからなんだよね……?


付き合い始めてからも何度頼んでも撮ってくれなかったのは、まだ元カノが好きだからなんだ…。


あたしを“澪”って呼ばないのは、きっと元カノが“ユイ”って名前だったから…。


ねぇ、廉……


あたしを撮ってよ……


あたしは……


あなただけを見てるのに……


「……っ……ふっ……!」


廉に言いたい事はたくさんあるのに、言葉よりも先に涙が溢れた。


廉……


あたしだけを見て……