30分もしないうちに、嵐から電話が掛かって来た。


「俺だけど……。今着いた」


「あっ……じゃあ、すぐに降りるね!」


少しだけ震える声を誤魔化す為に明るく言って、コートを羽織ってから階段を降りた。


玄関のドアを開ける前に深呼吸をしたら、悲しくも無いのに涙が溢れてしまいそうになった。


「よっ♪」


ドアを開けると、嵐は寒空の下で優しく笑っていた。


「ごめんね。いきなり……」


あたしは上手く笑えなくて、引き攣った笑みを返してしまった。


「暇だったし、大丈夫♪それより渡したい物って、何だよ?」


「うん……。ちょっと歩かない?」


あたしは言い終わるよりも早く、近所の公園に向かって歩き出した。


公園に着くまで、あたし達は一言も話さなかった。