結局、部屋に亮太と二人きりになって、まぁ二人きりになることなんて珍しくもなんともないんだけど。笑

でもやっぱり、こうやって旅行に来て、いい旅館に泊まって。

みんなでわいわいもいーけどこういうとこ来たらちょっとくらい二人になりたいとか思ったりするわけで。

つくづく、桃ってそうゆうのわかってるな、って思う。


「ここ、いいとこだねぇ。」
「ホント大介ってすげぇよなぁ〜」

「その上顔もよし、頭もよし、ってありえないよね。」

「何、お前大介ファンかよ?」

「うん!」

「ひでえよ〜」

「愛してるのは亮太だけだけどね。」

「え…」

言ったそばから顔が熱くなる。

バカだ。いつもそう。自分で言って、勝手に恥ずかしくなる。


「へぇ〜ひかる、俺のことだけ愛してるんだ?」

「あ〜、もういいじゃん!」

私が言いおわる前に、亮太に後ろから抱き締められた。

亮太の体温と着てる浴衣の柔らかさとが気持ち良い。

好きってこういうのを言うんだ。亮太と付き合って初めて知った。

ただ彼の存在がいとおしい。彼のためなら無償で何かを注ぎ続けられる。

そう思えるから不思議だよね。


しばらくこのままでいたいな〜なんて思ったり…


………

もう20分も経過してますが??

「亮太いい加減苦しいんだけど。」

「いーじゃん。」

「だめ!桃達んとこ行こ!」

亮太の手をほどいて立ち上がるよう促す。


「へーい、わかりやしたよ!―痛っ!」

「どしたの?」

「やべ、なんか頭が…」

言いながらその場に亮太は倒れこんだ。


え…何が起こったの?状況がうまく飲み込めない。どうして亮太は、起き上がらないの?

うまく言葉が出てこない。体が動かない。助けを呼ばなきゃ。救急車を呼ばなきゃ。

頭ではわかってるのに。立ち尽くすばかり。

私は目の前が真っ暗になった…