「ちょっと用事があるんだが」



わざとらしい笑顔を浮かべて増川は言った。



「うるせぇ知らねえ」



全く聞く気もない。

沙羅も増川も。



「ちょっとこのポスター見てくれ」



増川は前に回り込んで三人の足を止めた。

持っていたのは、和太鼓を打つ青年たちの写真が載ったポスター。



「見た。これが何???まだ何か用事かょ」



苛々してくる。

行く手を止められるのが一番嫌いなのだ。



「行かないか。」

「はぁ??どこにだょ。頭おかしぃんじゃねぇの、お前」



増川を押しのける。

それにも負けず、増川も押し戻る。

怒りもせず、増川は話し続けた。

この写真の青年たちは和太鼓のプロで、更正施設で暮らしている青年たちだということ。

その青年たちが、明日近くまで和太鼓の公演で来るから、一緒に行こうと。