さっきまで笑っていたのは何だったのか…

クラスの中は無言。

沙羅がいる日は、いつもそう。

机に伏して沙羅が寝ていても、無言。

その日は1日、無言だった。



「終礼、終わった」



恵那の声で目が覚めた。



「えぇ??あ、そ。帰ろ」



鞄を掴んで席を立つ。

香奈と恵那と三人で帰るのは、苦にならない。



「どけ。邪魔」



ドアの前で話し込んでいるクラスメイトを一蹴して、教室を出た。



「相変わらずの鬼っぷりだねぇ」



香奈の茶々にニコリともせず、げた箱へまっしぐらに歩いて行く。

後輩も、先輩すらも沙羅に道を譲る。

絶対的権力

その単語は沙羅のものだった。

沙羅本人は、興味もない。

気を使って道を譲っている奴らが、阿呆らしく見えていた。



「加藤-!!!加藤!!」



後ろから沙羅を呼び止めたのは、倫理の増川。

増川の事も、沙羅は大嫌いだった。

オヤジのくせに妙に愛想が良くて気持ち悪い。

今日に限らず沙羅に付きまとってきて、うんざりしていたのだ。