それを荒々しく引ったくって、背中を向けてスタスタと教室の方へ歩いていく。



「お前いい加減にしとけよ!!!」



その背中に向けて石田が怒鳴る。



「知らね」



小さな声で沙羅は呟いた。




教室は三階にある。

この教室に来た事自体久しぶりだ。



ガラっ…



勢いよく開いたドアと沙羅の姿に、何やら盛り上がっていたクラスの雰囲気は一瞬にして冷え固まる。

教壇に立っていたのは新任の女性理科教師で、オロオロと狼狽えている。

その様をチラッと横目で睨んで、教壇に入室届を叩き付ける。

このクラスの誰もが、沙羅のことを恐怖としていた。



「久しぶりじゃん、沙羅」



隣の席の香奈が声をかけてきた。



「だね。しばらくじゃん」



沙羅も笑って返した。

香奈ともう一人、恵那くらいだ。

このクラスで沙羅を恐れず話しかけられるのは。



「黙ってねぇで授業すれば???新任の先生さ」



鞄を荒々しく机に叩き付けて、足を組んで椅子に座る沙羅に、新任教師は狼狽えたまま授業を再開した。