チッと舌打ちして煙草を手にしそうになる。

そしてその後、状況を把握した。

一応教師の車の中。

煙草は吸えない…



「おう加藤、煙草吸っとけよ。俺にも一本くれないか」



拍子抜けどころの騒ぎじゃない。

教師が生徒の煙草を認めた上に、一本くれ…とか。

無言で一本差し出し、沙羅も煙草を加えた。



「沙羅みたいな暴れ馬が大衆の前で暴れ出したら俺たち止められないからなぁ」



増川は笑っていった。



「沙羅とか呼び捨てにすんな!!!」



また、食らいついてしまった。

名字だけならともかく、下の名を教師に呼び捨てにされるのはどうも気に喰わない。

昔からそうだった。

後輩二人は教師の前で堂々と煙草をふかす沙羅を唖然とした顔で見つめている。



「着いたぞ」



増川に連れてこられたのは山の中の公民館だった。



「…んだょ山ん中かょ」



本当に何もない。

見事なまでに何もない。

あるのは山と田畑だけ。

歩いて行く増川の後ろを着いて行く。

公民館の中はリフォームされていて意外に綺麗だった。