『だけど、俺はできれば休んで波音と一緒にいたい』



いつの間にかソファーから離れて私の後ろに来ていた涙が、後ろから抱き締めてくる。




……私だって。



私だって涙と一緒にいたい。



そう思うよ?でも。




『ほら、もう時間でしょー?行く行く!』



抱き締められた腕を解いて、玄関の方へと涙を押していく。




『行かないでって言わないの?』



靴をトントン、と履きながらまだ言う涙。




『言わないよ?でも……その代わりなるべく早く帰ってきてね?』



なるべく、早く。




『ん。二次会までは出なきゃマズいかもしれないけど、なるべく早く帰ってくるな』




微笑んだ涙は、そのまま優しくキスしてくれる。



『雨、降るらしいから気をつけてね』



『はいはい。戸締まりしっかりしろよ?じゃ、行ってきます』


『いってらっしゃい』




そういって涙は飲み会に出かけていった。




……今思えば、あの時「行かないで」って言えば、涙は飲み会に行かないであんな事になることもなかったのかな?




なんて思うけど、そんな事を今更後悔してももう遅い。




涙がいなくった部屋で、何時間後かに降り出した雨の音を聞きながら、私はベッドに潜り込んで眠りについたんだ。