真っ直ぐ雅臣さんを見て聞く。



聞いた途端、サッと視線を逸らされたけど、少しの間を置いて雅臣さんが口を開いた。




「……そうだよ。涙がこうなったのも、レイコさんが原因だ」



あぁ……って思う。



あの人のせいで、涙がこんな事になったんだ。



私が今、悲しい思いをしなければいけなくなったんだ。



ううん、私だけじゃない、か。



涙の家族も。



そして……涙自身も。




ごめんなさいね?、は、涙の記憶を無くしてしまってって意味?




人の記憶を無くしといてあんな謝り方で許されると思うの?




……怒りが胸の中を支配していく。




「……いいの?波音ちゃん」


「何がですか?」




雅臣さんの言いたい事が分からず、聞く。



「今からでも、遅くない。
涙の婚約者だって涙に言っても良いんじゃないの?」



「……何でですか」



擦れた声を出す私に、雅臣さんは気まずい表情を浮かべる。




「彼女……レイコさん。多分涙の事が好きだと思う。

“私が責任取って一生面倒みます”って、涙が病院に運ばれてまだ意識が戻らない時にそう言ったんだ」



「一生……」


一生、涙の傍にいると。



涙と一緒に生きていくと誓いあったのは、私なのに。