「波音ちゃん。大丈夫?」


……どのくらい経ったのだろうか。




そろそろ戻らなきゃと思いながらも涙が止まってくれずに帰れなくてそのまま机に伏せていた時。




目の前の椅子が引かれる音と同時に、涙に似た声が降ってきた。




顔を少しだけあげると、雅臣さんが複雑な表情をして座っていた。



「飲み物買いにここまで来てたんだ。涙の部屋と同じ階に自販あるのに」




私の向こうにあるいくつかある自動販売機を眺める雅臣さん。




「……すみません」


「謝ることないよ。多分泣いてるだろうと思ったし……あ、ここに来たのは涙に言われたからなんだ」


「涙……?」





涙を拭って起き上がり、雅臣さんを見る。




「あいつが、なかなか波音ちゃんが帰ってこないから探してきてくれって言ったんだ。
迷子になってるかもしれないからって」




迷子って…笑いながら雅臣さんが言う。



心配、してくれてるんだ。




それが、素直に嬉しい。




「目、赤くなってるな。ジュースで冷やすか?何がいい?」




そう言って立ち上がろうとする雅臣さんを、首を横に降って止める。





「……あの、レイコ…さんって、涙の事故の元になった方ですよね?」