パパの目が赤くなる

「パパにとって、妻は陽菜一人だけだから。他の人と一緒になる気はない」

パパって、本当にママが好きだよね

ママを大切にしてる

亡くなってからも、ママだけを想ってる

そういう男の人ってなかなかいないと想う

パパがすごいな

「人づきあいって面倒だね」

あたしの言葉にパパが肩を竦める

「ほら、愛菜、急げ。学校の近くまでの車で送ってやるから」

パパがあたしの背中を叩いた

「え? いいよぉ。そしたらパパが遅刻しちゃう」

「いいんだよ。彩樹と一緒に登校されるほうが嫌なんだよ」

「パパって我儘だよね」

あたしの言葉にパパが眉をひそめた

「我儘とは違うだろ」

「我儘だよ。ママと付き合ってる時は、自分たちの交際を反対するおばあちゃんに啖呵をきってたんでしょ? ずっと反対してるようなら、あたしも家出するかも」

「はあ?」

パパが不機嫌な声をあげた

だって、あたし…彩樹が好きなんだもん

ずっとずっと…好きでやっと彩樹が振り向いてくれたの

絶対に、離れたくない

「パパは、高校生の頃の陸上のタイムを彩樹に越されたから嫉妬してるのよ! 彩樹は努力家で、才能もあるんだから仕方ないの! パパは、ママと一緒にいたいから陸上部に入っただけでしょ? 気持ちの入り方、全然違うのよ」

「ああ?」

パパの眉がぴくっと動いた