「…なんだよ、今の。」


「お前さんが見たとおりじゃよ。
女の子は自転車にひかれかけ、わしはそれを先読みした。」


「…」


「まだ信じとらんな。
じゃあ、あそこの会社員は盛大なくしゃみを3回する。」



そう言って今度は俺の横を通り過ぎて行った、おっさんを指差した。



―ハクションッ!ハクションッ!ブェーックションッ!!


その瞬間おっさんはくしゃみをした。



「あのおばさんは何もない所でつまづく。」
「角から黒いベンツが曲がってくる。」
「コーヒー屋の店員が出て来て、伸びをした後『客来るかな?』とつぶやく。」



などとじいさんは視界に入って来る人のほとんどの行動を先読みしていった。
そしてそのすべてが当たっていた。




本当に、本当なのか?
じゃあ俺がもうすぐ死ぬっていうのも本当なのか?


じいさんが振り返って俺を見る。


「信じたか?」