ピンポーン――♪

『次は○○駅~。お降りの方は・・・』


「あっ・・・」


 私は思わず衣玖の方を振り返った。


「ん? 準備、してた方が良いんじゃない?」


「う、うん・・・」


 確かに、そうなのだが…。なぜか動く気になれない。


 私がぐずぐずしていると、衣玖が耳元で囁いた。


「大丈夫、きっとまた会えるよ」


 どうして衣玖はこんなにも私の心が分かるのだろう…


(私、今絶対顔赤い・・・)


 私は顔を上げられず、俯いたまま、コクンと頷いた。