良枝の名前が出た時、一瞬、雅巳は肩を強張らせた。

「そう……」

「これ、俺からのプレゼント」

 僕は用意してきた小さな花束を雅巳に渡した。雅巳はようやく、いつもの柔らかい笑顔を僕に向け、もう一度「ありがとう」と言った。

「綺麗ね」

 僕の目には花束よりも雅美の方が綺麗に映った。

「もう一つ僕から……これは出会って一周年の記念の意味も込めて」

 そう言いながら僕はようやく手に入れた指輪の入ったジュエリーケースを雅巳に差し出した。雅巳は驚いたようにそのジュエリーケースを受け取った。

「中、見ていい?」

「うん」

 喜んで欲しくて用意したものだったから、僕の頭の中では満足そうな雅巳の顔を想像して、早く開けて欲しいと思っていた。雅巳の喜ぶ顔が見たかった。

 雅巳はジュエリーケースを開け、中の指輪を見ると驚いたように吐息を漏らした。

「……こんなに高い物もらえない」

「そんな事言うなよ。俺、雅巳に喜んでもらいたくて、バイト、頑張ったんだ」

 僕の言葉に雅巳は息を呑んだ。

「最近、会えなかったのって……これのためにバイトしていたから?」

「そうだよ。驚いた?」

「驚いた。ありがとう……でも……」