雅巳に自分の気持ちをどんな形でもいいから伝えなくちゃいけないと思っていたし、自分の出来る事をしたかった。

僕はバイトに明け暮れて、自然に雅巳と過ごす時間も減ってしまった。

良枝と選んだ指輪を手に入れるために貯金も切り崩した。

そこまでして手に入れた指輪を手に僕は雅巳を初めて出会った場所、経済学部の校舎前に呼び出す事を計画していた。

そして、迎えた雅巳の誕生日。

桜の花弁が舞い、とても心地のよい陽気だった。春休みの最中で人の姿が、あまり見られないのも、あの時と同じだ。

僕はこの日を運命の日だと思っていた。

雅巳と初めて出会った日。

そして、僕の愛する雅巳がこの世に生を受けた日。

 僕が雅巳を人気のない校舎裏に雅巳を引っ張っていくと、雅巳は何事だろう、という表情を向けた。

今日が自分の誕生日だということも忘れていたみたいな表情だった。

「誕生日おめでとう!」

 僕の言葉に雅巳は寂しげな表情で微笑んだ。

自分の気持ちを伝える事でいっぱいいっぱいな僕は雅巳の表情がどうしてそんなに寂しげなのか考える余裕もなかった。

「ありがとう。私の誕生日、知っていたの?」

「秋山さんから聞いたんだよ」