視察の説明が一通り済んだ後は、黙って控えていたラーファルト神官長が前に進み出た。

「あなたたちと行動をともにする神官を紹介しますね」

 神官長の声を合図に、三人の若い神官が自己紹介する。

「ぼ、ぼくは……ロキ、といいます。回復担当です」

「おれはマリオン。防御や補助なら任せてくれ。よろしくな!」

「ジークリードだ。自分は攻撃魔法を得意とする」

 緑髪の三つ編みがロキ。
 オレンジ髪の一つ結びがマリオン。
 紫髪のおかっぱがジークリード。

 全員、訓練で見かけたことがあるから一応顔見知りだ。

 緑髪がロキ。
 オレンジ髪がマリオン。
 紫髪がジークリード。

 ……顔見知りだが、顔と名前が完全一致するように何度も唱えておこう。

「戦闘になった場合は彼らの力が役に立つでしょう」

 基本的に神官への戦闘指示も俺が出すことになる。彼らの得意魔法を把握して上手く使いこなすのが連携(れんけい)の鍵だな。

 隊員の中には実戦経験を長く積んだベテランも多くいるが、新生『空姫親衛隊』としては初任務。
 いや……どれだけ経験を積んでも、実戦は思いがけないことの連続だ。
 そして、ほんのわずかな判断ミスが“死”に直結する。

 俺は、玉座の広間に(つど)った者たちを見渡した。

 ティアニス王女は三十人余りいる親衛隊の一人一人に激励の言葉をかけている。
 エリーゼ姫は執政官と挨拶をかわし、三人の神官たちは神官長に旅の心得を説かれていた。

 彼らの命運が俺の判断にゆだねられる。
 未だ俺に反感を持つ者もいる中で、どれだけ護りきれるだろうか。

 両肩の空気が、重くなる。