「お前はなんでそんな恰好しているんだ?」

 この場に来てからずっと気になっていたティアニス王女の服装に物申す。
 服装というか……装備に。

 実戦用のわりにデザイン性の高い金縁と紅玉の装飾がついた白銀の部分鎧を身につけている。修行でしていた恰好そのままだ。

 しかし、王女は質問の意図が全くわからないといったふうで

「なんでって戦地に行くんだから、このくらい装備してとうぜんでしょ?」

 仮にも初の視察に出向くなら王女に相応(ふさわ)しい服装というものがあるだろう。
 俺でさえ公の場に出るからと、普段は着崩している制服を窮屈(きゅうくつ)さを我慢してちゃんと着ているのに。

 今朝、レガートが物珍しそうに
『君の正装姿を見るのは叙任式以来だね』
と、けなしているのか誉めているのかわからない感想を述べていたのは余談だが。

「王女が武装して被災民と接する気か」

「戦える王女のほうが民だって心強いわ」

「頼むから俺の存在意義を奪わないでくれ」

「騎士は、国や民を護るために存在するものでしょ」

 このジャジャ馬姫はああ言えばこう言う。どうせ何を言っても無駄だが、最後に一言だけ念を押した。

「戦闘時は俺の指示に従ってもらうぞ」

「もちろんよ。足手まといにはならないわ」

 そんなやり取りに、大人びた少女がくすくすと年相応な笑顔を見せる。

「おもしろいわ、あなた。王族にちっとも()びないのね」

 言われてみればエリーゼ姫にも普段の言葉遣いでいたな。

「気に障るなら変えるが」

「いいえ、そのままでよくてよ。あなたは、あなたらしく。おねえさまは、おねえさまらしく。それがいちばんだわ」

 なんか上手いことまとめられたぞ。