「力ずくで認めさせても意味ないだろう」
「!」

 今度は氷青色の瞳を正面から見据えた。

「あいつらの好きにさせてやれ」

 その代わり、俺も好きにする。

 誰がなんと言おうと、俺が隊長である事実は変わらない。ならば、責務を(まっと)うするだけだ。彼らの反感が責務を果たす妨げにならなければ、どうでもいい。

 そんな言いぶんを拍子抜けといった顔で黙って聞いていたレガートが、いきなりプッと吹き出した。

「面白い男だな」

「面白い?」

 そんなことを言われたのは生まれて初めてだ。……逆なら腐るほどあるが。
 何がツボにはまったのかしばらく喉の奥でクックッと笑った後、心底楽しそうに言う。

「平民だからか。いや、嫌味ではない。僕の周りにはいないタイプだ」

「だろうな」

 確かに俺みたいな奴は貴族では見ないだろう。
 相槌(あいづち)を打つと、また笑った。
 いつもの爽やかな笑みとは違う。初めて見せる、楽しい遊びを思いついた少年のような笑顔。

 ……おかしな奴だ。

「空姫親衛隊長! ここに隊長殿はおられるか!?」

 霹靂(へきれき)(ごと)く、貫録(かんろく)のある声が鍛錬場に(とどろ)いた。