「構わん」

 重苦しい空気を吹き飛ばすように投げかけた。ベンとアルスが同時に目を()く。
 そんな二人にもう一度、ぶっきらぼうに放った。

「言ったはずだ。……好きにしろ」

「……っ!」
「そういうところがいけ好かないんだよ!」

「あ、おい、アルス! ベン!」

 友の制止も今は届かず、二つの背中が遠ざかっていく。
 見送ったレガートは「やれやれ」という顔を向けた。

「せっかく認めさせるチャンスだったのに……。君は隊長としてやる気があるのか?」

「お前も認めないんじゃなかったか」

「実力がなければね。この目で確かめたかっただけさ。僕にも副隊長としてのプライドがある。
 この程度の風あたりで音を上げる隊長なら、不信任案を出すことも考えていたよ」

「あてが外れたな」

「全くだ。音を上げるどころか物ともしなさすぎる。あれでは反感を買うよ」

「別に構わん」

「……君は剣より人づきあいを学んだほうがよくないか?」

「ハッキリ言って面倒だ」


 腕組みしながら明後日のほうを向いて吐き捨てた。横目に、疲れたような呆れたような……なんとも言えないレガートの苦笑いが映る。

 確かに俺はお世辞にも人づき合いが上手いとは言いがたい。それは認めるが──