「認めねぇ!!」
何事かと居合わせた者がいっせいに振り向く。鍛錬場から音が消えた。
負け惜しみ……とは少し違う。俺の実力を知ってもなお認めがたい何かが、彼の中にはあるようだ。
「そいつの腕は確かにすげぇよっ。けど! レガートと互角くらいじゃ隊長とは認められない!! 互角なら……
レガートが隊長でよかったじゃないか!?」
少し癖のある跳ねた赤髪を振り乱して、すがるような目で叫んだ。
そんな友の肩を励ますように軽く叩いて、ベンが言葉を補う。もう一人の友を真っ直ぐ見据えて。
「レガート、お前の言いたいことはわかる。隊の中でいがみ合ったままでは任務に支障をきたすかもしれない。それでも……悪いが、私もアルスと同じ気持ちだ。
レガート以上じゃないと認められない……!」
今度はレガートが押し黙る番だった。
呼吸すらも躊躇われるほどの、沈黙。
俺に難癖をつけたのは、単に平民が気に食わないというわけではなかった。
騎士として男としてレガートがいかに出来た人物であるかは、隊長になって日の浅い俺でもわかることだ。
二人から見れば、敬愛する友が手にするはずだった地位を突然現れて横取りした……ということか。実際は上が決めたことなのだから横取りも何もないが。
心はそう簡単に割り切れないのだろう。