「やめろ!!」

 冴え渡る声に、振り上げた三本の剣が静止する。

 出所を確かめようと首を巡らせると、鍛練場の入口に立っていたのは──
 銀色の騎士。
 いつもは涼やかな目元に、珍しく険しい色をにじませていた。
 ゆっくり俺たちに近づいてきて小さな溜息を零す。

「僕のいない隙に何をしているかと思えば……もう、勝負はあった」

「オレは認めねぇ!」
「これくらいレガートでも……!」

 アルスとベンがそろって抗議するも

「彼が君たち二人がかりでも敵わない力を持っていることは、確かだ」

 残酷なほどすっぱり()ねのけた。
 すぐに押し黙ったベンとは違い、アルスは興奮冷めやらず喰ってかかる。

「レガートは認めるのかよ!?」

「君たちのやった騙し討ちは騎士として恥ずべきだろう。僕はそれを(いまし)めているんだ」

 厳しい口調に返す言葉を失う。
 それを認めると、レガートは俺に真っ直ぐ顔を向けてから頭を下げた。

「すまなかった。副隊長である僕の管理不行届きだ」

「別に気にしてない」

 レガートの謝罪を見て、ベンとアルスは渋々剣を納める。

「レガートの言う通りだ。悔しいが……私たちの負けは認めよう」

「確かに剣の勝負はオレたちの負けだが、まだ隊長とは認めないからな!」

「好きにしろ。剣が不得手な者に勝っても無意味だ」

 こんな手合いで認めさせようとはハナから考えていない。思ったままを口にすると、二人は苦々しい顔をした。

「なら、今度は僕と手合わせしてくれないか?」

 思いがけない申し出だった。