誠さんは私の横を通り過ぎて、リビングに向かう。

「あ、雨、大丈夫だった?」


「…マンションついてから降り出したから。」



…?



誠さんは私の方を振り返ることなく冷たく言葉を零した。

私はもう一度息を吸い込む。


「あ、あの誠さん、ごめんなさい、夕飯簡単なものしかないんだけど…」


ネクタイを解く背中に向かって話し掛ける。


「…いや、飯はいいよ」


「……」


振り向くことなく言い放たれた言葉。




どうしたんだろう…

どうして…?

どうして急に…



貴方に見捨てられたら私は…今の私には…

貴方しかいないのに…






突然怖くなった。

苦しくなった。


胸の奥が…心が押し潰されそうだ。




すぐそこに在るはずの誠さんの背中が

いつも傍に寄り添ってくれたはずの心が

こんなにも遠い……。