「ごっ…ごめんなさい!夕飯どっか食べに行こうって言ってたのに私勝手に…!」


「…しい」

「……え…?」


誠さんがゆっくりと私の方を振り向く。


どうしよう…私やっぱり余計なこと…!



「すんげえ嬉しい!!!」


「………!」


向けられた笑顔は 、見たことないくらいの弾けるような笑顔だった。



胸の奥がギュウッ…と熱くなる。



「すげー!これ全部千夏の手づくり?!俺こんな料理食ったことないよ!?」


まるでたくさんのおもちゃを覗き込む子供ように、零れるような笑顔でテーブルを覗き込む誠さん…。

そして豚肉のピリ辛炒めをパクッと一口つまんだ。


「あっ…」


思わずそれを止めようとした途端、誠さんはびっくりしたように目を見開いて…


「…んまい……これめちゃくちゃ旨いよ!」


「ほ…本当…?」


身体の奥から

じわ…と満たされていく感じがした。


「本当だって!俺こーゆーのめちゃくちゃ好きだもん」


そう言いながらまたもう一口つまもうとする手を止める。



「ちょっ…誠さんっ」


誠さんは少年のように笑う。

私もつられて笑う。



温かい……温かい…。



誠さんが笑ってくれると…

心の奥がこんなにも温かい…。



「俺ダッシュで着替えて来るから」


誠さんはネクタイを緩めながら寝室に向かった。


残された部屋で、自分の胸が甘く…トクトクと血液を送り出している。

ギターを掻き鳴らすポスターの中の男性を見ても、口元は綻ぶばかりだった。