心を落ち着けるようにソファーに腰かけ、再びテレビの電源を入れる。
『…では今が収穫真っ盛りで』
『…の熱愛報道が』
『…からお伝えしている政治献金の裏金問…』
次々とチャンネルを変える。
そして。
『…というわけで、今日のクッキングコーナーは夏にぴったりのスタミナ料理です!』
エプロン姿の若い女性アナウンサーと、コックの男性が笑顔を振り撒く映像が飛び込んで来た。
私は電話機の傍に置いてあったペンとメモ帳を急いで掴み、画面に映し出された文字を必死で書き写す。
「………っ……」
がむしゃらに書いた自分のメモを見て、思わず自嘲的な笑みが零れた。
全く同じとは言わなくても、私の走り書きした文字は…
ポケットにしまったはずのあの文字と、ほぼ同じ筆跡だった。
数字の5の横棒がやたらと長いとこ。
グラムの「g」の書き方。
『身体が…覚えてんのかなぁ…?』
誠さん…
どうやら貴方の言う通りみたいだよ…。