でも、ずっとずっと名前を呼ばれることがなかった――


誰かが駆け足で目の前を走っていった。

事故にあった子供のお母さんだろう。

そして、そのお母さんはすぐに部屋に通され、

しばらくして安心した顔で、

病室を出てきた。


――その時、思ったんです。

おかしいよね?

なんで私のほうがずっとずっと待ってるのに、

どうしてあの人のほうが先なの?


香矢にあわせてよ!!

もう、どうしていいかわからず、

ただただ、結城の手を強く握って

まぶたを強く閉じていた。